
蔵王の樹氷は「スノーモンスター」の愛称で知られています。人の姿に似た白い塊が山肌を埋め尽くす光景は、 一見するとファンタジーの世界のようですが、れっきとした気象現象です。そして、この規模で見られる場所は 世界でもごくわずかしかありません。
3つの条件が同時に揃う場所
山形県の資料によると、樹氷ができる条件は大きく3つあります。ひとつは、シベリアからの強い季節風が 大量の過冷却水滴と雪を運んでくること。もうひとつは、氷や雪が付きやすい常緑針葉樹「アオモリトドマツ」が 自生していること。そして、樹氷となる木々が雪に埋もれてしまわない、適度な積雪量であることです。
できるまでの3段階
日本海の対馬暖流から水蒸気を受け取ったシベリアからの季節風は、朝日連峰でいったん雪を降らせ、 山形盆地を抜けて再び蔵王連峰で上昇し、雪雲をつくります。この雲の中には、0度以下でも凍らない 「過冷却水滴」が含まれていて、これがアオモリトドマツの枝にぶつかると一気に凍りつきます。 これを「着氷」と呼びます。
着氷でできた氷の隙間に雪片が入り込む「着雪」が繰り返され、さらにこれが硬く締まる「焼結」という 過程を経て、次第に大きな塊へと成長していきます。風上に向かって育つため、独特の非対称な形になるのも 特徴です。
風向きが一定でなければ育たず、気温が高すぎれば溶け、低すぎれば雪が付きません。 条件のどれか一つが欠けても、あの姿にはなりません。
暖冬は、樹氷にとって逆風になる
樹氷が育つには、平均気温がマイナス10度前後まで下がる、安定した厳冬期が必要です。 近年、暖冬傾向が指摘されるなかで、樹氷の成長条件がこれまでより揃いにくくなっているという指摘もあります。世界でも数える程度の場所でしか見られない現象だからこそ、気候の変化がそのまま 景観に跳ね返ってくる、ということでもあります。